チャーチ、トリッカーズの靴

日用品からファッションアイテムまで…20年間愛用しているアイテム【わたしのサステナブルvol.3】

私自身、都内で小学校6年生と保育園年少の子どもを育てながら、女性ファッション誌の編集者&ライターとして多忙な日々を送っています。人物インタビューやジェンダー、教育、ファッションなど幅広いテーマを取材する中で、仕事と育児のバランスを模索する毎日です。

前々回は「義務としての料理」を手放したことで暮らしにゆとりが生まれた話を、前回はオンライン打ち合わせの普及によって働き方が変わり、子育てとの両立がしやすくなったことを書きました。どちらも、「無理をしすぎず、持続可能な形を模索すること」が共通するテーマだったように思います。

そして今回は、「長年愛用しているアイテム」について。サステナブルな視点がファッション業界でも当たり前になった今、流行を追うのではなく、本当に好きなものを長く大切に使うことの価値を改めて実感しています。20年近く愛用しているトレンチコートや革靴、娘に受け継ぎたいと思うジュエリーなど、私の暮らしの中に息づく「続いていくもの」について書いてみたいと思います。


ファッション界でも持続可能性はマストに

ファッション界においても、今や持続可能性は大きなテーマです。ラグジュアリーブランドでも、カーボンニュートラルや素材のリサイクルなどだけでなく、ヴィンテージのリセールなど画期的な取り組みが始まっています。毎年新作を発表するのではなく、残ったアイテムを次の年も売るなども、これまでにはない流れとして出てきました。


カジュアルブランドでも、その服を作ったときに使った二酸化炭素量を公表する等、サステナビリティへの意識が高いブランドが登場しています。ビニール傘を再利用したファッショナブルなバッグなども。サステナビリティに配慮したブランドを愛好していることは、ファッション業界の中でも一目置かれるポイントになっていると思います。同じ服を買うのでも環境に配慮したものを選ぶようにする、その小さな一歩がちょっとずつ世界を変えていくと信じたいところ。


そんな流れの中、トレンドを追うのではなく自分の好きなものを末長く楽しむというマインドが今一番“かっこいい”とされている気がします。アパレルは、リサイクルをするよりも同じアイテムを末長く使ったほうが明らかに環境負荷が低いもの。ファッション誌を手がけているとジレンマも感じますが、もうそれは抗えない流れであり、その中でブランドもファッション誌も、新たな付加価値や表現の仕方を探っていっている最中です。


20年間、愛用しているファッションアイテムたち

私も、一つを大事にというその気持ちを大切にしている一人。というよりも、幸い好みがこの20年ほど変わっていないのです。20年前に買ったもので今も現役のアイテムもたくさんあります。


例えば、大定番のトレンチコート。ベージュと黒を着比べて、黒のほうが似合うと言われ黒を購入しました。けれどベージュと違ってクリーニングや日焼けなどでいつしか褪色が気になるように。着古してくったりしたトレンチも味わい深いもので、それも歴史あるブランドの力でもありますが、「手入れをした上でのくったり感」が魅力的なのだと思います。そこで、クリーニング店の補色サービスを利用してみることに。もちろんアイコンの裏地のチェック柄はそのままに、表地の黒だけ濃くすることができました。今年ちょうど購入して20年ですが、まだまだ活躍しています。


そして20年選手といえば革靴も。レディース靴では、メンズ靴のようにグッドイヤーウェルト製法(靴底が接着ではなく縫い付けられていて、アウトソールの交換が複数回可能)のものがあまりありません。やはりそこは、英国靴が優れていてレディースでも選択肢が多いです。例えばジョンロブ、チャーチなど。グッドイヤーのものはイニシャルコストコそかさむものの、靴底の張り替えをしていけば20年でもはき続けることができ、しかも年々足にフィットして、自分だけの一足になります。磨き込んだときの美しさも、新品にはない上品な輝きがあり、まさに一朝一夕には手に入れられないものだと思います。娘と足のサイズが同じならば、ぜひ受け継ぎたいと思うもの。


(左から)チャーチ、トリッカーズの靴。どちらも手入れをすれば一生ものかなと思います。あえてドレスにヒールではなくメンズライクなものを合わせるのが好きです。

(写真:(左から)チャーチ、トリッカーズの靴。どちらも手入れをすれば一生ものかなと思います。あえてドレスにヒールではなくメンズライクなものを合わせるのが好きです。)

娘へということであればジュエリーも大事にしがいのあるアイテムです。40代に入ると、久しく離れていたシルバーへの愛が復活してきました。もちろん昨今のジュエリーの高騰ぶりによって貴金属を気軽に手に入れにくくなったこともありますが、大人になったからこそシルバーを楽しむのも素敵だと思います。例えばイタリア女性のように、日焼けした肌に大ぶりなシルバーのバングルなど。昨日買ったようなものではなくて、長年使い込んで傷が愛着を語ってくれるようになると、とても素敵だなと思います。シルバーも使用によってくすみや変色が出ますが、クロスで磨いたり時にはジュエラーに持ち込んだりすれば、新品のようにはなりませんが黒ずみが取れます。もちろん新品のようにしたいわけではなく、傷を磨きこむことでできるくすみが、上品な味わいになります。そう夢見ながら私がいつか娘に譲りたくて最近購入したのは、ティファニーのボーン カフです。デザイナーは敬愛するエルサ・ペレッティ。近代ジュエリー史において革命的なデザインとされ、誕生から50年を越えたティファニーの名作です。オンもオフも毎日つけて、傷ができていくのがむしろ愛おしいのです。仕事をがんばって買ったジュエリーを、いつか娘に手渡す日を楽しみにしています。


日用品も長く使えるものを

アパレルやジュエリーだけでなく、日用品でもできるだけ長持ちして頑丈なものを選ぶようにしています。例えばタッパーは、イワキのパイレックスのガラス製。厚みがあるので割れることなく10年以上使用できており、食洗機にも入れやすくニオイ移りもありません。


柴田慶信商店のおひつ

(写真:柴田慶信商店のおひつ

また、前々回もご紹介した柴田慶信商店のおひつも愛用中です。黒ずみが気になってきた場合は削り直しができるなど、末長く修理ができるところもポイントで選びました。使い捨てではなく手をかける前提で選ぶと自然ともの選びが慎重に。その視点を忘れなければものも増えすぎず、いつか子どもたちに手渡せる楽しみだけが、一つ一つ大切に積み重ねられていく気がしています。