「あ〜……便秘かもしれない」
お腹の調子やお通じの調子がイマイチなとき、腸に良いものを食べようかなと思う人も少なくないはず。
「今日から毎日ヨーグルトを食べて、腸活しなくちゃ」
と思い立って、ヨーグルトをはじめとする乳製品や発酵食品、食物繊維などを手当たり次第食べてみたことがある経験はないでしょうか? でも腸の調子がよくなるどころか悪くなることも……。一体どういうことなのでしょうか?
「腸活」って何?
まずは「腸活」とは何か? から説明しましょう。腸内には約1000種類、100兆個に及ぶ腸内細菌が生息していて(腸内フローラ)、善玉菌、悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3グループで構成されています。体を健康に保つにはビフィズス菌や乳酸菌などの善玉金を増やすことが大事で、腸内フローラを整えることを腸活と呼んでいます。
では、善玉菌を増やすにはどうすれば良いのでしょうか? 善玉菌を増やす方法は二通りあります。プロバイオティクスとプレバイオティクスと呼ばれるもので、生きたまま腸に到達して有益な働きをする微生物やその微生物を含む食品をプロバイオティクスといいます。
ビフィズス菌や乳酸菌を含むキムチや味噌、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品が挙げられます。
一方、プレバイオティクスは腸内に元々存在する善玉菌を増やす作用があるものを指し、食品としてはオリゴ糖や食物繊維で、野菜類、果物類、豆類などに多く含まれています。
腸に良いはずのヨーグルトなのに…お腹がゴロゴロするのはなぜ?
しかし、これらの「腸に良い」とされる食品をとった際にお腹の調子が悪くなってしまう原因は何なのでしょうか? 実は、乳糖(ラクトース)を分解する酵素の少ない乳糖不耐症の人がヨーグルトなどの乳製品を食べた場合、分解ができず腸内に酸やガスが発生し、腸が過剰に収縮して下痢や腹痛を引き起こすことがあります。
ヨーグルトのほかにも一般的に腸に良いとされる発酵食品をとってお腹の調子が悪いという場合、オリゴ糖の過発酵が起こり、短鎖脂肪酸が過剰に作られることで大腸内が酸性に偏り、ガス産生や腸管の麻痺を起こす場合があります。
次に食物繊維です。もし食物繊維をとって下痢や腹痛になってしまった場合は、腸内細菌が過度に働いて過剰な発酵を起こしている可能性が考えられます。
低FODMAP食事法で自分の腸の声を聞く
実は最近の研究で「FODMAP」と呼ばれる糖質類がお腹の不調の原因ということが分かってきました。
Fermentable→発酵性の
Oligosaccharides➝オリゴ糖
Disaccharides➝2糖類(ラクトース)
Monosaccharides➝単糖類
AND
Polyols➝ポリオール
という意味で、これらは小腸で吸収されにくい4種類の発酵性糖質 です。
低FODMAP食事法では、まず3週間、高FODMAPの食べ物を避けて、次に上記の糖質が含まれる食品を一週間に一種類ずつとって自分のお腹に悪さをしている糖類を特定していきます。
自分が何を食べたらお腹にどんな症状が出たかを記録し、腸の声を聞くことで自分の腸に合わなかったり、相性が悪かったりする食べ物を特定することができます。
腸内フローラと呼ばれる私たちの腸を構成する腸内細菌は一人一人違います。いくら「腸活に良い」と言われている食材でもそれをそのまま鵜呑みにするのではなく、まずは自分の腸の声を聞いて、自分に腸に合ったものを選んでいくことが大事です。
参考文献・サイト
江田証『お腹の不調』(新星出版社、2024年)
江田証『腸のトリセツ』(学研、2020年)
e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html